濃筆(だみふで)とは

ダミ筆は、有田焼などの製造に特有の筆で、ダミと呼ばれる下絵付けの技法に使用されます。有田焼に特有のこの筆は、全長約20cmほどの竹軸に、約8cmの毛束が付いており、毛の直径はおよそ5cmにも達する非常に太い筆です。しかしその先端は極めて細く作られており、筆の圧や毛の開き具合を手指で繊細にコントロールすることで、呉須(ごす)の濃淡を巧みに表現することができます。

濃筆には吸収性の高い毛が使われており、素焼きされた素地に呉須を施す際に、絵具をたっぷり含ませることができる構造になっています。筆圧や筆の寝かせ方などによって濃淡やグラデーションを自在に描くためには、高い技術と経験が必要です。

また、呉須を溶く際には、水ではなく「緑茶」を使うことが多いのも特徴です。これは、緑茶に含まれるタンニンが天然の接着剤のような働きをし、顔料の定着を助けるといわれています。近年では、天然呉須は緑茶で溶き、合成呉須は水で溶くのが伝統的な使い分けとされています。

有田焼の濃筆は、広島県・熊野で作られた鹿毛の筆が多く使われており、特にその太さや形状は有田ならではのものです。ほかの産地でも濃筆が使われていますが、多くは細身のタイプであり、有田のような大ぶりな筆は珍しいとされています。