「このカップ、熱湯注いでも大丈夫かな?」
「見た目が薄いけど、割れたりしない?」
そんなふうに不安になったことはありませんか?とくに陶器や磁器のカップは、見た目の繊細さから「お湯を入れても平気?」と気になる方も多いようです。
この記事では、陶器・磁器・ガラスの3素材を中心に、「熱湯を注いでも大丈夫?」という疑問を、食器専門店 Studio1156(スタジオイイコロ)の視点から詳しく解説します。
【INDEX】
熱湯は注いでも大丈夫?
結論から言うと、陶磁器は100℃のお湯を注いでも大丈夫です。
日常使いの湯呑みやマグカップ、熱燗用の徳利などは、どれも1000℃以上の高温で焼成されており、熱湯のような温度差で割れることはありません。
陶器と磁器の熱伝導率の違い
陶器も磁器も熱湯を注いでも問題ありませんが、熱の伝わり方(熱伝導率)には大きな差があります。
陶器は原料に多くの土(粘土)を含むため、素地に微細な空気の層があり、熱をゆっくり伝える性質を持っています。そのため、持ったときに「じんわり温かい」「手に優しい」と感じやすく、冷めにくいという特徴もあります。
一方で磁器は、陶石や長石を高温(約1300℃)で焼き締めた緻密な構造のため、空気の層がほとんどありません。そのぶん熱がすぐに表面へ伝わるため、熱湯を注ぐと瞬間的に器が熱く感じられます。
この違いが、「陶器はあたたかみがある」「磁器はシャープでクール」といった印象にもつながっています。
最も注意が必要なのは「ガラス」
熱湯を注ぐ際に最も注意が必要なのは、ガラスの器です。
ガラスは一見丈夫に見えますが、陶磁器のように1000℃以上で焼き締められているわけではなく、熱膨張の差に弱い素材です。特に「耐熱ガラス」と明記のない一般的なガラス製コップやグラスは、熱湯を注ぐと破損の危険があります。
割れる原因の多くは「温度差」
キンキンに冷やしたガラスコップに常温の水を注いだだけでも、温度差が大きければ割れることがあります。逆に、温かい飲み物を入れた後に氷を入れる場合も同じです。
ガラスの器を使うときは次の点に注意しましょう。
-
冷蔵庫や冷凍庫から出した直後は常温に戻してから使用する
-
熱湯を注ぐ場合は耐熱ガラスを選ぶ
-
熱い状態の器を急に冷やさない
一般的なガラス(ソーダガラス)と耐熱ガラス(ホウケイ酸ガラス)は見た目がそっくりですが、素材の構造が全く異なります。耐熱ガラスには理科実験用ビーカーと同じ素材が使われており、熱膨張に強く、電子レンジやオーブンにも対応しています。
割れやすくなるケースとは?
陶器や磁器の話に戻りますが、器を長く愛用するためには日常のちょっとした扱い方が大切です。どれも難しいことではありませんが、知っているだけで器の寿命がぐっと伸びます。
① 冷えた器に熱湯を注ぐ
冷蔵庫などで冷やした器をそのまま熱湯に触れさせると、温度差による熱膨張のストレスで割れるリスクがあります。特に磁器は緻密な構造をしているため、温度変化を受けやすい傾向があります。
② 熱々の器に冷水を注ぐ
コーヒーを淹れた直後のカップをすぐに水に浸けたり、氷を入れた飲み物を注いだりするのも同様に危険です。急冷によってヒビが入り、時間差で「パキッ」と割れることもあります。
③ ヒビや貫入(かんにゅう)が入っている器
目には見えない程度のヒビでも、そこに熱が集中することで亀裂が広がる場合があります。特に陶器の貫入は味わいのひとつですが、熱い液体を頻繁に注ぐ場合は避けるのが安心です。
④ 直火・電子レンジ・オーブンでの使用
陶磁器は基本的に直火不可です。電子レンジは磁器であれば基本的にOKですが、金彩・銀彩などの金属装飾がある器はNG。オーブン加熱は、急加熱による破損や釉薬の変質につながる場合があります。
熱湯を注ぐときに大切なのは、「素材ごとの特徴を知っておくこと」です。陶磁器や耐熱ガラスも、正しく扱えば長く美しく使い続けられます。お気に入りの器をいたわりながら、季節の飲みものをゆっくり楽しんでみてください。





