炻器(せっき)とは、陶磁器を「陶器」「磁器」「せっ器(炻器)」「土器」の4種類に分類したうちのひとつで、土を主原料とする焼き物のことです。

陶器と磁器の中間に位置する焼き物で、陶器と同じく土を主原料としながらも、磁器に近い特性を持つのが特徴です。釉薬をかけずに、1200℃から1300℃という高い温度で長時間かけて焼成することで作られます。

この高温焼成によって、土に含まれる成分が溶けてガラス質となり、器の表面はガラスの膜で覆われたような状態になります。

高温で焼き締まっているため、陶器よりも硬く、強度があります。また、水分をほとんど吸収しないため、汚れや臭いが染み込みにくく衛生的です。

炻器には、釉薬を施さない無釉炻器と、釉薬を施す施釉炻器の2種類があります。しかし、一般的に炻器といえば、釉薬をかけない無釉炻器の方が有名です。釉薬を使わないことで、土本来の色合いや質感がそのまま現れます。窯の中で薪の灰が降りかかり、自然釉となって独特の模様が生まれることもあります。

日本には、炻器の優れた産地が数多くあります。特に有名なのは、日本六古窯にも数えられる備前焼(びぜんやき)や常滑焼(とこなめやき)です。これらの産地では、土味を最大限に活かした素朴で力強い炻器が今もなお作られています。