初期伊万里とは
古伊万里の中でも、特に歴史が古く、希少価値が高いとされる時代のものです。その魅力は、決して完璧ではない、手仕事ならではの温かみと力強さにあります。
日本で初めて磁器が作られたのは1616年。朝鮮人陶工・李参平によって有田の地で磁石(じせき)が発見されたことが始まりとされています。初期伊万里は、その誕生からおよそ30年ほどの間に作られたものを指します。
初期伊万里の特徴
当時の作品の多くは、藍色の絵付けが特徴的な染付(そめつけ)でした。しかし、まだ技術が確立されていなかったため、現代の磁器とは少し異なる素朴な特徴があります。
通常は素焼きをしてから本焼きを行いますが、初期伊万里は素焼きの工程がなく、「生掛け(なまがけ)」といって、成形し乾燥させた後に直接絵付けをして本焼きをしていました。そのため、歪みや貫入、指跡なども多く見られます。
不均衡にかけられたやや青みがかった釉薬、厚みのある器、そして鉄分が多く含まれているため鉄粉なども多く現れています。
また現在のように石膏型がなかった上に、ろくろや焼成の技術も未熟だったため、器の形は少し不揃い。しかし、だからこそ生まれた力強く自由な筆遣いは、当時の職人たちの個性を生き生きと感じさせてくれます。
当時の日本には磁器の文化が存在しなかったため、デザインの多くは中国・明時代末期の景徳鎮磁器(けいとくちんじき)を参考にしています。技術指導は渡来した朝鮮陶工によるものでしたが、当時の有田の陶工たちは、見たこともない漢字を用いた絵付けに戸惑ったことでしょう。そのため、誤字や読みにくい文字なども見られますが、こうした「味わい」こそ初期伊万里ならではの魅力の一つとされています。
現代に受け継がれる初期伊万里の意匠
初期伊万里とは、1610年代から1630年代頃までに有田で焼かれた、古伊万里の初期段階にあたる磁器を指します。あくまで江戸時代初期に実際に作られた作品のことであり、現代に制作されたものは含まれません。
一方で、現在ではその風合いや技法を意識して再現した「初期伊万里写」や「初期伊万里釉」といった作品もあり、これらは当時の雰囲気を楽しむために作られた現代のやきものです。